犬の病気・治療について

飼い主様に覚えておいてほしいワンちゃんの病気

日本にはたくさんの種類のワンちゃんがいますが、犬種によってかかりやすい病気が違います。犬種別に注意して頂きたい病気をご紹介します。

犬種別のかかりやすい病気

短毛なのでお手入れは比較的簡単ですが、換毛期には大量に毛が抜けるので、この時期には念入りなブラッシングが必要です。抜け毛を放置すると、皮膚病の原因となることがあります。

かかりやすい病気

かかりやすい病気

  • アトピー性皮膚炎
  • 緑内障
  • 白内障

など

ゴールデン・レトリーバー

換毛期は大量の毛が抜けるので、こまめなお手入れが必要です。運動量を多く確保することが大切な犬種です。

かかりやすい病気

  • アトピー性皮膚炎
  • 緑内障
  • 眼瞼内反症
  • 股関節形成不全
  • 大動脈弁狭窄
  • 甲状腺機能低下症
  • 甲状腺腫瘍
  • リンパ腫

など

シーズー

目が大きくかわいらしいのが特徴ですが、その分、眼瞼内反症、網膜剥離などの目の病気にかかりやすいので注意が必要です。

かかりやすい病気

かかりやすい病気

  • 眼瞼内反症
  • 網膜剥離
  • 睫毛乱生
  • 緑内障
  • 白内障
  • アトピー性皮膚炎
  • マラセチア皮膚炎
  • 気管虚脱
  • 尿石症
  • 肛門周囲腺腫
  • 僧帽弁閉鎖不全症
  • 心室中隔欠損症

など

ダックスフンド

胴長短足の体型のため、椎間板ヘルニアになりやすい犬種です。

かかりやすい病気

  • 椎間板ヘルニア
  • 糖尿病
  • 膿皮症
  • 耳介脱毛症
  • 出血性胃腸炎
  • 白内障
  • 鼻咽頭狭窄
  • 肥満細胞腫
  • 下垂体腫瘍

など

チワワ

最小の小型種なので、頭蓋骨にすき間があり、水頭症になりやすい犬種です。骨折も多くみられます。

かかりやすい病気

  • 水頭症
  • 骨折
  • 膝蓋骨脱臼
  • アトピー性皮膚炎
  • マセラチア皮膚炎
  • 緑内障
  • 肺動脈弁狭窄
  • 気管虚脱
フレンチブルドック

暑さに弱いので、夏場の温度管理には注意してください。また、食欲旺盛で太りやすいので、食事の量や質には注意するようにしましょう。

かかりやすい病気

  • 眼瞼内反症
  • 短頭種気道症候群
  • 軟口蓋過張症
  • 膿皮症
  • 潰瘍性結腸炎
  • 尿石症

など

プードル

骨が細いため、骨折がよくみられます。自分で段差から飛び降りただけでも骨折することがあるので注意が必要です。

かかりやすい病気

かかりやすい病気

  • 骨折
  • 膝蓋骨脱臼
  • 水頭症
  • マセラチア皮膚炎
  • 緑内障
  • 副腎皮質機能低下症
  • 甲状腺機能低下症
  • 僧帽弁閉鎖不全症
ポメラニアン

骨が弱いので、ちょっとした段差から飛び降りただけで骨折してしまうことがあります。また、歯の病気にかかりやすく、早期に歯が抜け落ちてしまい、食事を十分に摂れなくなり、老化が進行することもあります。

かかりやすい病気

  • 骨折
  • 肘関節脱臼
  • 膝蓋骨脱臼
  • 気管虚脱
  • 水頭症
  • 緑内障
  • 甲状腺機能低下症

など

マルチーズ

特徴的な白い被毛をきれいに保つために、こまめなお手入れが必要となります。また、目のまわりの涙やけを防いだり、食事後の口元の汚れを取ったりするために、顔まわりをこまめに拭くことも大切です。

かかりやすい病気

  • 膝蓋骨脱臼
  • 白内障
  • 緑内障
  • 水頭症
  • 僧帽弁閉鎖不全症

など

ヨークシャー・テリア(ヨーキー)

寒暖差に弱いので、室内飼いがおすすめですが、骨が弱く骨折の恐れがあるので安全な飼育環境作りが大切です。また、被毛のお手入れを怠ると、すぐに毛玉ができて皮膚炎の原因となることがあります。

かかりやすい病気

  • 骨折
  • 膝蓋骨脱臼
  • アトピー性皮膚炎
  • 脱毛症
  • 白内障
  • ドライアイ
  • 尿石症
  • 水頭症
  • 僧帽弁閉鎖不全症
  • 汗腺腫瘍

など

ワンちゃんにこんな症状はありませんか?

ワンちゃんの日々の健康管理は、飼い主様の「気づき」にかかっています。大切なワンちゃんの全身をみて、いつもと違った点はないかチェックするようにしましょう。少しでも「おかしいな」と思った時には、すぐに尼崎市のとも動物病院までご連絡ください。

症状別の考えられる病気

嘔吐

ワンちゃんは人間よりも比較的よく嘔吐し、問題のない生理現象の場合もあります。ただし、何度も嘔吐したり、苦しそうに嘔吐したりする場合には、病気が原因であると疑われるので、すぐに当院までご連絡ください。

考えられる主な病気
  • 犬パルボウイルス感染症
  • 犬ジステンパー
  • ヘリコバクター胃炎
  • 逆流性胃炎
  • 炎症性腸疾患
  • 消化管内異物
  • 腸閉塞
  • 肝炎
  • 急性膵炎
  • 急性腎不全
  • 子宮蓄膿症
  • 熱中症

など

下痢

下痢の原因は様々なですが、命にかかわる感染症が原因の場合もあります。嘔吐や発熱などもともなう場合には、すぐに当院で診察を受けるようにしてください。

考えられる主な病気

  • 犬パルボウイルス感染症
  • 犬ジステンパー
  • 内部寄生虫
  • 食事反応性下痢
  • 炎症性腸疾患
  • 慢性腎不全
  • リンパ腫
  • 熱中症

など

尿の異常

排尿の回数が多くなったり、尿が出なかったり、尿の色や量がいつもと違う場合には、病気を疑う必要があります。排尿量が少ない場合には、脱水症状のケースもあるので注意が必要です。

考えられる主な病気

  • 犬レプトスピラ感染症
  • バベシア症
  • フィラリア症
  • 椎間板ヘルニア
  • 糖尿病
  • クッシング症候群
  • 副腎皮質機能低下症
  • 甲状腺機能低下症
  • 腎不全
  • 尿路結石症
  • 膀胱炎
  • 子宮蓄膿症
  • 前立腺肥大
発熱

ワンちゃんの平熱は38.5~39.0℃程度ですが、運動後でもないのに元気がなく発熱しているようであれば、病気を疑う必要があります。特に41.0℃以上の高熱の場合には、命にかかわる危険性があります。

考えられる主な病気

  • 犬ジステンパー
  • 犬伝染性肝炎
  • ケンネルコフ
  • 犬レプトスピラ感染症
  • 狂犬病
  • マダニ感染症
  • 免疫介在性関節炎
  • 熱中症

など

脱毛

局所的な脱毛や、体の広い範囲で被毛が抜け落ちるなど、様々なパターンがあります。皮膚病のほか、内分泌の病気や感染症など原因も多様なので、症状に気づいたらすぐに当院で診察を受けるようにしてください。

考えられる主な病気

  • クッシング症候群
  • 甲状腺機能低下症
  • アトピー性皮膚炎
  • 皮膚糸状菌症
  • マセラチア皮膚炎
  • ノミアレルギー性皮膚炎
  • 内分泌性皮膚疾患

など

口臭・体臭

ワンちゃんには元々、ある程度の体臭はありますが、定期的にシャンプーをしても皮膚の臭いが気になったり、口臭がしたりする時などには、病気を疑う必要があります。

考えられる主な病気
  • 外耳炎
  • 歯周病
  • 鼻炎
  • 糖尿病
  • アトピー性皮膚炎
  • 皮膚糸状菌症
  • マセラチア皮膚炎
  • ノミアレルギー性皮膚炎

など

目やに・涙

目の疾患のほか、感染症によっても目やになどの症状が現れる場合があります。決して軽く考えず、病気のサインの1つととらえて観察するようにしましょう。

考えられる主な病気
  • 犬ジステンパー
  • 白内障
  • ドライアイ
  • 角膜潰瘍
  • ぶどう膜炎

など

ワンちゃんの感染症

細菌やウイルスがワンちゃんの体内に侵入して増殖することを「感染」と言い、感染症とは、感染によって病気が起こった状態です。ワンちゃんがかかる感染症には、伝染力が強く致死率も高い「犬パルボウイルス感染症」や、神経症状もある「犬ジステンパー」のほか、混合感染で致死率が高まる「犬伝染性肝炎」などがあります。致死率の高い感染症は、ワクチン接種による予防が重要となります。高い免疫力を維持するためにも、毎年1回接種するようにしましょう。

犬パルボウイルス感染症

犬パルボウイルス感染症とは、パルボウイルスに感染することで起こる感染症です。発症すると嘔吐と下痢が続き、脱水症状などを引き起こして数日内に死亡する危険性の高い感染症です。抵抗力の弱いワンちゃんでは、治療が遅れると2日以内に約9割が死亡するとされています。成犬でも、2~3割は命を落とす危険性がある恐ろしい病気です。犬パルボウイルス感染症に対する有効な薬はありませんが、脱水症状への対症療法や、他の感染症を予防する抗菌薬の投与などを行います。

犬ジステンパー

犬ジステンパーとは、犬ジステンパーウイルスに感染することで、高熱、不活発(元気がない)、食欲低下、下痢、嘔吐、目やに、鼻水、くしゃみ、咳などの症状が現れる感染症です。ワクチン未接種の1歳未満の子犬に発症することが多く、免疫力の高い成犬の場合、症状が軽度のまま治癒することもありますが、免疫力の弱い子犬の場合には命を落とす危険性があります。犬ジステンパーウイルスに対して有効な薬がなく、治療では症状を抑える対症療法が中心となるため、ワクチン接種による予防が重要となります。

犬伝染性肝炎

犬伝染性肝炎とは、犬アデノウイルス1型に感染することで起こる感染症です。感染力の強いウイルスなので、口から侵入して2~8日の潜伏期間を経たのちに、急性の肝炎になります。不活発(元気がない)、食欲低下、鼻水などの症状のほか、40℃以上の高熱が出る場合もあります。1歳未満の子犬では、特に症状が現れないまま突然死を引き起こすケースもあります。他の感染症との混合感染によって致死率が高くなるため、治療では二次感染を予防するための抗菌薬の投与のほか、肝臓の機能を回復させる治療などを行います。

犬伝染性咽頭気管炎

犬伝染性咽頭気管炎とは、犬アデノウイルス2型に感染することで起こる感染症です。「ケンエルコフ」とも呼ばれます。主な症状は咳で、運動時や興奮時など咳が発作的に起こることもありますが、日常的には比較的元気に過ごしていることが多いと言えます。微熱とともに数日で咳が治まれば問題ありませんが、混合感染を起こすと高熱が出て、肺炎に移行する危険性があります。発症した場合には、気管支拡張剤や咳止めなどの対症療法を行います。また、原因がマイコプラズマや細菌であった場合には、抗菌薬による治療を行う場合もあります。

犬コロナウイルス感染症

成犬の場合は軽度の胃腸炎で済む場合も多いのですが、子犬では犬パルボウイルスとの混合感染で重症となるケースがあります。下痢、嘔吐などの症状が発生して、脱水症状を引き起こすと突然死する子犬も少なくありません。犬コロナウイルスに対する有効な薬はなく、下痢や嘔吐などの症状への対症療法が中心となるため、ワクチン接種による予防が重要となります。

ワンちゃんの皮膚病

ワンちゃんの皮膚病は、「痒がっている」「毛が抜けている」「出来物ができている」などと目に見える症状が多いため、飼い主様が早期に気づきやすい病気です。ワンちゃんがかかる皮膚病には、遺伝的な体質が関連すると考えられている「アトピー性皮膚炎」や、赤いブツブツや環状のフケなどが特徴的な「膿皮症」のほか、ノミの唾液に反応して痒くなる「ノミアレルギー性皮膚炎」などがあります。皮膚病には治るまでに時間のかかるものもありますので、根気よく治療を続けられるようにしてください。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは、遺伝的な体質(アトピー体質)が関連する皮膚病であると考えられています。3歳未満で発症するケースが多く、左右対称に症状が現れるのが特徴で、足先、顔面、耳などに多くみられます。血液検査などで原因と思われるアレルゲンが特定された場合には、生活環境からそうした物質をできるだけ減らすようにするなどの治療を行います。

膿皮症

膿皮症とは、皮膚や粘膜に常在している病原性の低いぶどう球菌が原因で発症する皮膚病です。ぶどう球菌が毛穴で増殖すると、赤いブツブツの発疹ができたり、環状に広がるフケがみられたりすることがあります。膿皮症の治療では、抗菌作用のあるシャンプーや外用薬などを使用するとともに、抗生物質を投与します。

皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌症とは、真菌の一種である皮膚糸状菌に感染することで発症する皮膚病です。症状は全身の様々な部分で起こり、皮膚糸状菌が毛に感染すると、脱毛、環状のフケ、赤く盛り上がった発疹、赤いブツブツの発疹などがみられるようになります。皮膚糸状菌症の治療では、抗真菌薬の内服を中心に、抗菌作用のあるシャンプーや外用薬などを使用します。

マセラチア皮膚炎

マセラチア皮膚炎とは、酸母様真菌の一種であるマセラチアに感染することで発症する皮膚病です。脂質症体質のワンちゃんに多くみられる皮膚病であると言われています。皮膚の表面の角質でマセラチアが増殖して、痒みや赤みなどの症状を引き起こします。マセラチア皮膚炎の治療では、抗菌作用のあるシャンプーで患部を洗浄することが中心となります。

ノミアレルギー性皮膚炎

ノミアレルギー性皮膚炎とは、ノミの唾液がアレルゲンとなって、刺された部分以外にも痒みを引き起こす皮膚病です。背中から尾にかけての部分や下腹部、会陰部などに赤い発疹や皮膚の赤み・痒みなどが起こります。ノミアレルギー性皮膚炎の治療では、副腎皮質ステロイド薬の内服などにより痒みを抑えるほか、ノミの駆虫などを行います。

ワンちゃんの癌

10歳以上で死亡するワンちゃんの死因の約半数は、癌であるとされています。若年で発症する癌もありますが、一般的には6歳を過ぎると癌の罹患率が高くなり、9~10歳ごろが発症ピークであると言われています。癌を早期発見・早期治療するためにも、5~6歳を過ぎたら年に1回程度、10歳を過ぎたら年2回程度の健康診断を受けられることをおすすめします。

リンパ腫

リンパ腫とは、体内のリンパ球が腫瘍化したものです。6~8歳の中高齢のワンちゃんに多くみられます。リンパ球は全身の様々な部分に分布しているため、リンパ腫も全身の広範囲で発生することになります。ワンちゃんのリンパ腫のうち、約8割は体のリンパ節が腫れる「多中心型」であると言われています。リンパ腫の治療では、主に抗がん剤を使用します。リンパ腫は抗がん剤によく反応することがわかっており、多くの症例で効果が期待できます。

肥満細胞腫

肥満細胞腫とは、体内の肥満細胞が腫瘍化したものです。悪性の皮膚癌うち、最も多くみられます。皮膚で発症することが多いのですが、粘膜、筋肉、内臓などで発症することもあります。肥満細胞腫の治療では、肥満細胞腫の摘出手術などの外科的治療が重要となります。転移を起こしていたり、手術が難しかったりする場合などには、放射線治療や抗がん剤治療などを行うこともあります。

肛門周囲腺腫

肛門周囲腺腫とは、肛門まわりの分泌腺にできる腫瘍です。通常、肛門まわりの毛の生えていない部分に小さなしこりとして見つかりますが、稀に毛が生えている部分や、尻尾などでも発見されることがあります。また、1箇所だけでなく、複数箇所に同時に発生することがあります。肛門周囲腺腫は未去勢の老犬に多くみられる腫瘍で、男性ホルモンが関係しているため、若いうちに去勢手術を受ければ予防することができるようになります。肛門周囲腺腫の治療では、手術による切除が中心となります。この際、去勢手術も同時に行って再発を防止するのが一般的です。

骨肉腫

骨肉腫とは、骨にできる腫瘍です。骨の病気の中でも骨肉腫が最も多くみられます。7~8歳の大型犬が特になりやすく、転移する場所は肺が多いとされていますが、他の骨や肝臓などの他の内蔵に転移することもごく稀にあります。骨肉腫で最も一般的な治療は、腫瘍が発症した骨の上位にある関節部からの断脚です。そのほか、抗がん剤による治療も行われます。

乳腺腫瘍

乳腺腫瘍とは、雌のワンちゃんの乳房やそのまわりなどにしこりができる病気です。未避妊の老犬に多くみられ、女性ホルモンが関係しているため、若いうちに避妊手術を受ければ予防することができるようになります。初期には痒みや痛みなどの症状はほとんど現れませんが、腫瘍が化膿すると悪臭がするほか、他の臓器へ転移すると死に至る場合もあります。乳腺腫瘍の治療では、手術などの外科的治療が中心です。多くの場合、乳腺腫瘍は早期治療により治癒をはかることが可能です。ただし、生後1年以内に避妊手術を受けることで、乳腺腫瘍の予防率を高めることができますので、他の生殖器系疾患を予防する意味でも、若いうちに避妊手術を受けておくことをおすすめします。

Tel.06-6480-7728